2006年の冬が近づいている。私はこれまでずっと、電気で暖房など現実的でないと思っていた。寒い日にエアコンで暖房しても、ぜんぜん暖かくならないという経験は誰しもしたことがあると思う。ところが先日、恐ろしいものを発見した。
日本で暖房に通常使われるエネルギー源は
高校で物理をやってれば習ったはずですが、世の中の人々の99%は忘れてると思うので、説明をば。エネルギーの単位は主にJとcalがあります。1 cal は、1gの水の温度を1度上げるエネルギー量です。1 J は 約0.24cal です。1秒間に1Jのエネルギーが送られる(作られる、使われる)場合、1Wと呼びます。よって、1kWh(キロワット時)は、1000x60x60で、3600000J=3.6MJとなります。
電気 | 5.8円 |
深夜割引電気 | 1.9円 |
都市ガス | 2.6円 |
LPガス | 4.5円 |
配達灯油 | 2.2円 |
私はつい先日まで、東京電力の「お得なナイト10」を契約していたが、通常の契約に比べて得したかと言われれば、答えはNOである。もう、時計をみて電気を使う生活はしたくない。40A程度の契約で得をするのは、至難の技と思われる。
引越しで都市ガスからLPガスに変わったので、LPガスについても調査した。 高い高いと言われるLPガスだが、確かに高い。大体都市ガスの2倍である。電気ストーブとガスファンヒーターのエネルギー単価が同じになるというのは、なかなか感動的である。はっきりいって、LPガスを暖房に使うのは高すぎる。 以下、ガスと書けば都市ガスのことと思って読んでもらいたい。
次に考えるべきこととして、ガスと灯油はただ燃やすだけだが、電気はヒートポンプを用いて外気からエネルギーを輸送できるという点である。エアコンの暖房はこの機能を使っている。そのため、例えば1000Wのエアコンは、1000Wの電気ストーブに比べて、2倍以上の暖房能力を持っている。この比は、COPと呼ばれる。カタログに必ず記載されている数値であり、我が家のエアコン暖房の場合、COP=3くらいである。
追記:下で書いたようにCOP値は環境によって変化するので、最近では、年間を通じた平均COP値という意味でAPFという単位が使われている。暖房COPは冷房COPよりも高いが、おおむねCOP=APFと思っておけばよいだろう。
ただしカタログ記載のCOPは、JIS規格に決められた状況(外気温7度、内気温20度)での値であって、温度差が大きい場合は、カタログ値以下の性能しか出ない。特に暖房が必要なのは、外気温が寒いときであり、エアコンにとって不利である。凍結するとまた話がややこしくなるので、ここでは外気温0度、内気温22度の状況を考えよう。カタログスペックでCOP=3のエアコンの暖房は、この状況ではCOP=2.2程度に落ちる。
ヒートポンプを使わない暖房(ガスファンヒーター、灯油ストーブ、ハロゲンヒーターなど)の場合は、もちろんCOP=1である。例えば、1000Wのエネルギーを、そのまま熱に変えて部屋に放出するのみである。このことを踏まえて、暖房費用を計算すると
電気(ヒートポンプ) | 2.6円 |
深夜割引電気(ヒートポンプ) | 0.86円 |
電気(非ヒートポンプ) | 5.8円 |
深夜割引電気(非ヒートポンプ) | 1.9円 |
ガス | 2.6円 |
配達灯油 | 2.2円 |
暖房コストは灯油が最安。エアコンとガスはいい勝負で、電気は倍以上する。
次に、最大暖房能力を考えよう。これは実用上、きわめて重要なポイントである。
電気は非力。普通の家の場合、電気だけで暖房は厳しい。
これは主に、家に帰り着いてすぐに暖房をつけた時に威力を発揮する。暖房とはすなわち、人間の体を温めるのが目的なのであって、空気を暖めるのはその手段にすぎない。局所的に暖かければ、そこにいる限りは快適なのである。
追記2:コタツがよい例である。
この項目は、電気がもっとも苦手とする分野ではないだろうか?なにしろヒートポンプの特性上、なるべく温度差は小さく抑えたい。ファンヒーターは室温より15度高い温風をちょっと送るシステムであり、エアコンは室温より5度高い温風を大量に送るシステムである。空気から人体への熱移動速度は、温度差によって決まる。体を素早く温めるのにどちらが適しているかは明らかである。ということで、
ガス、灯油の圧勝
これは特に、灯油暖房にとって重大な問題であろう。暖房の副作用は以下のようにまとめられると思う。
電気 | 空気が乾燥する |
ガス | 空気は乾燥しない。多少くさい。一酸化炭素中毒の危険あり |
灯油 | 空気は乾燥しない。かなりくさい。一酸化炭素中毒の危険あり |
電気の圧勝
この項目は、ヒートポンプ暖房にとって重大な問題である。なんらかの方法で室外機を凍結から守らなくてはならないが、そのために使われるエネルギーは、部屋の暖房とは無関係であろう。ヒートポンプというのは、室外機が外気より冷たい空気を吐き出し、外気を取り込むことで、外気のエネルギーを内気に輸送するシステムである。外気温が−10度にもなるような北海道で、一体どうやってヒートポンプを動かすのか。COPはどのくらいの値になるのか、など謎が多い。今後調査してみたい。
ひとつ確実にいえそうなのは、外気温が氷点下の場合、COPはかなり下がるだろうということ。馬鹿な制御系の場合、電力を全部室外機の凍結防止に使ってしまうということも起こりえる。その場合、COP=1どころか、COP=0となる。これまでの個人的経験からしても、外が非常に寒いときは、エアコンは殺したくなるくらい使えない。ということで、
ガス、灯油に軍配(ただし要調査)
このページを書きながら、エアコンの通信販売ページなどを見ていると、最近のエアコンは実に優秀であるということが分かってきた。冷暖房平均COP=6とか書いている。JIS規格(外気温7度、内気温20度)での暖房COPの理論値はCOP=9.44なので、かなり理論値に近づいている。恐ろしいことである。暖房のCOPの方が、冷房のCOPよりも高いので、ここではカタログCOP=7(実現COP=5)のエアコンの場合の費用を、表にしてみた。
電気(ヒートポンプ) | 1.16円 |
深夜割引電気(ヒートポンプ) | 0.38円 |
電気(非ヒートポンプ) | 5.8円 |
深夜割引電気(非ヒートポンプ) | 1.9円 |
ガス | 2.6円 |
配達灯油 | 2.2円 |
高性能エアコン恐るべし
追記:いろいろ調べると、高性能エアコンは(家庭用の場合は)消費電力の低い製品が多い、すなわち最大暖房能力はどの商品も大差ないことが分かってきた。やはりあの箱からガスファンヒーター2台分の熱を出すのは、難しいようである
LPガスになったので、ガス代が高くてしょうがない。ひょっとしたら銭湯行った方が
安いんじゃないか、と疑うあなたに(え?自分だろって?w)新セクションを設けます。
風呂の水量は、いろいろあるようですが少な目の200Lとしましょう。200Lの水の温度を1度あげるのに必要なエネルギーは200x1000x1 [cal] = 833 [kJ]です。でも浴槽や
配管もあたためる必要があるので、ここは分かりやすく 1度UP = 1 MJ で計算しましょう。風呂を40度まで暖めたいと考えて、水道水の温度が冬は5度、夏は20度とすると、冬は35MJ、夏は20MJ必要となります。ということで、
風呂のエネルギー源 | 冬 | 夏 |
電気(非ヒートポンプ) | 203円 | 116円 |
深夜割引電気(非ヒートポンプ) | 67円 | 38円 |
都市ガス | 91円 | 52円 |
LPガス | 158円 | 90円 |
灯油 | 77円 | 44円 |
LPガスで冬に風呂入ると、一回200円ちょいとなりました。なんかもっとかかる気がするんですけどね。たぶん室内で燃える場合と違って、給湯の場合はかなりのエネルギーが給湯器=室外に逃げちゃうのかな。まあしかし、どんなにかかっても400円まででしょう。銭湯は400円くらいです。よって冬のLPガス風呂と言えども銭湯よりは安いという結果となりました。