食品の栄養について

2011/04/27

20年間近く外食生活を続ければ、食品の栄養が気になるのは当然です。本稿では、

如何にして自炊せずに栄養をとるか

に着目し、

科学的視点

から外食の栄養バランスを検討します。

栄養の基本情報

人間が1日に摂取すべき栄養量は、たとえばここなどにあるように、非常に多様です。しかし、現代の先進国で外食しまくっている人にとって、重要な点は次のようにまとめられると思います。

ここで、あれ? と思われる人も多いかも知れません。

糖分や脂質の取りすぎはダメでは?

はい。もちろん脂っこいものを山ほど食べて、カロリー摂取過多になると、肥満になります。当然体によくないです。しかしそれは、食べすぎの問題であって、栄養の問題とは少し異なります。どんなに栄養バランスのいい食事でも、食べ過ぎれば肥満です。そもそも、

欲望の命ずるままに外食

したとしても、

1日の摂取カロリーは、せいぜい2500kcal

くらいになるはずです。これを超えるような場合は、もはや栄養の問題ではなく、ストレスなどによる過食、が疑われます。 成人男性で肉体労働をしていない場合は、摂取目安は1800kcalくらいですから、食べすぎには気をつけなければいけないのですが、 とりあえずここでは、肥満の問題ではなく、栄養の問題だけを考えることにします。

摂取カロリーの枠内で必要な栄養をすべて取ることが重要

毎日に摂取するカロリー量は一定であるべきです。栄養に気をつかうということは

限られた食事量の中で、すべての栄養を摂取する

という

最適組み合わせ問題

なのです。

甘いものや脂っこいものが体に悪いのは、栄養バランスの観点から言うと、そのような

カロリーばかりやたら高い貧栄養食品

で、一日の摂取カロリーを取ってしまうことによって、必要な栄養が取れないのが問題なのだと思われます。 これには、

人間はカロリーが足りると、満腹になる

という人間行動心理も深く関わります。お腹がいっぱいになれば、栄養上は こんにゃく(カロリーがほぼ0で食物繊維が豊富)を追加で摂取すべきであっても、食べようという気にならないわけです。
これは裏を返せば、カロリーが足りているというのが、人間の体にとっていかに重要なファクターか ということでもあります。ビタミンやミネラルがなくたって、しばらくは生きてますが、カロリーがゼロでは飢え死に することからも明らか。

摂取カロリーの分配

食事に含まれるカロリー源は3種類です。脂質は1gで9kcal、糖質とたんぱく質は1gで4kcalです。 そして、1日の摂取カロリーの50%を炭水化物(糖質)、25%をたんぱく質、25%を脂質から取るのがよい とされています。これを、1800kcalの食事で計算すると

炭水化物(糖質)は、1日225g

たんぱく質は、1日112g

脂質は、1日50g

となります。この3大栄養素の含有量は、食品に表示されています。 たとえば、普通サイズのポテトチップス(170g)の場合、100gあたり34gの脂質、すなわち57gの脂質が含まれているわけです。 一袋で、一日の制限を越えてますね〜

油っぽいものが特に体によくないのは、ほとんどの食品で、たんぱく質と脂質は同時に摂取してしまう という事情があります。脂質をまったく含まずにたんぱく質だけを含むのは、スポーツ用の乾燥プロテイン剤くらいなものです (まぐろの赤身などは、この点で優秀)。良質のたんぱく質は欠乏しがちなのに、脂質に割り当てられた1日50gを、貧栄養なもの(サラダ油などたんぱく質を含まない)で使ってしまうと、 体に悪いということです。

栄養成分

定義

ここでは、食品ごとに各栄養素ごとに、

1日の摂取カロリーの10%をその食品から取った場合、1日の摂取必要量のどれだけが取れるか

によって「食品Aにおける栄養素Bの豊富さ」を定義します。

たとえば食品Aの食物繊維の値が10%の場合、食品Aは食物繊維に関して標準的な栄養を持っているといえます。 値が100%の場合は、その食品によって1日のカロリーの10%を取るだけで、1日に必要な食物繊維をすべて摂取できる計算です。

食品によって、重さあたりのカロリー量が大きく異なることに注意してください。参考のため、タイトルに目安となる摂取量を記載しました。 すべての栄養素が10%以上になるように食べることが、理想的と言えます。20%以上となる栄養素を表記します。
食塩、蛋白質、脂質については、絶対量も併記しておきます。

異常豊富:60+ %  (特に異常に豊富な栄養素に関しては、その値を記載)
特に豊富:40+ %
  豊富:20+ %
カロリー: kcal  (タイトルにある分量を摂取した場合)
  食塩: %
 蛋白質: %
  脂質: %

なし1個 170g (pome, pear, nashi)

特に豊富:Cu
  豊富:K, 食物繊維
カロリー:73 kcal
  食塩:0 g
 蛋白質:1 g
  脂質:1 g
意外とミネラルが豊富ですし、食物繊維が取れます。食べて損することはないでしょう。食え!
一つ目の例なので解説を。なしはミネラルであるCu(銅)が「特に豊富(40〜60%)」です。なし1個は73kcalです。 つまり、なしを2個半食べれば1日の摂取カロリーの10%をなしから取り、そのときCuの摂取量は1日の目安量の 40〜60% になっています。

すいか 300g (a piece of watermelon)

異常豊富:VA,VC
特に豊富:VB6
  豊富:K, Mg, Cu
カロリー:111 kcal
  食塩:0 g
 蛋白質:2 g
  脂質:0 g
私の大好きなすいか。ビタミン類が豊富です。すいかは冷蔵庫に入れあっても、すぐ腐るのが問題です。

温州みかん(じょうのう・生) 6個 480g (??)

異常豊富:VA, VC (192%)
特に豊富:K, VB1
  豊富:Mg, Cu, VE, VB6,食物繊維
カロリー:221 kcal
  食塩:0 g
 蛋白質:4 %
  脂質:1 %
冬に食べまくると、6個くらい食べてしまえるみかん。ビタミンCの宝庫といわれる実力を遺憾なく発揮してくれます。計算上は、みかん3つで1日に必要なビタミンCがすべて摂取できます。

レトルトカレー 180g (??)

  豊富:脂質、Na, Fe, VB1
カロリー:212 kcal
  食塩:26 %
 蛋白質: 8 %
  脂質:24 %
見るからにダメ食品です。この脂質の多さに対するたんぱく質のなさが、すべてを物語っています。

ビッグマック 1個 (BigMac)

  豊富:脂質
カロリー:547 kcal
  食塩: 9 %
 蛋白質:13 %
  脂質:21 %
皆が「ダメだ、ダメだ」というマクドナルドの商品。マクドナルド発表の栄養成分表によると、発表されているすべての成分(Na,K,Ca,P,Fe,VA,VB1,VB2,ナイアシン,VC,食物繊維)において、7%程度、すなわち「そこそこ栄養豊かである」ことになっています。食物繊維とVCが、ともに4%程度と貧弱ですが、それでも他のダメそうな食品と比べれば、かなり健闘している部類に入ります。
すくなくとも、「レトルトご飯+レトルトカレー」などとは比較にならないくらい、 栄養豊かです。

生じゃがいも 2個 270g (potato)

異常豊富:K, VC
特に豊富:Cu, VB6
  豊富:Mg, VB1, ナイアシン
カロリー:205 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質: 6 %
  脂質: 0 %
生、というのが良く分かりませんが、とにかくVCが豊富な食材です。

絹ごし豆腐 1.2丁 360g (Kinugoshi-Tofu)

異常豊富:Mg, Cu, VK, 
特に豊富:
  豊富:蛋白質、脂質、K,Ca,P,Fe,Zn,Mn,VB1,ナイアシン、VB6
カロリー:202 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質:24 %
  脂質:20 %
なんというか、くせの強い食品ですねえ。高栄養なのは間違いないです。

ゆで大豆(枝豆) 120g (Edamame)

特に豊富:Mg, Cu, 食物繊維
  豊富:蛋白質、脂質、K,P,Fe,Zn, VE, VB1, ナイアシン
カロリー:202 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質:26 %
  脂質:20 %
食物繊維が豊富です。高栄養なのは間違いないです。
大豆関係は、かなり完全食品に近いです。欠乏しているのは、Mn, VA, VD, VB12, VC だけです。

ゆで卵 3個 140g (Boiled Egg)

特に豊富:VB12
  豊富:VA, VD, VB2, ナイアシン
カロリー:211 kcal
  食塩: 5 %
 蛋白質:24 %
  脂質:25 %
完全食品の有力候補である卵。なんせ、

ひよこを骨も含めてまるごと食べているようなもの

ですからね。当然高栄養です。
欠乏しているのは、Mn, VC、食物繊維だけです。これらのうち、VC以外は豆腐から豊富に摂取できます。つまり

卵と豆腐のコンビネーションは、かな〜り完全食品に近いと思われます。

ただし、ビタミンCだけは、別途摂取してください。

プロセスチーズ 60g (Processed cheese)

異常豊富:VB12
特に豊富:Ca, P
  豊富:脂質、Zn, VA, VB2, ナイアシン
カロリー:203 kcal
  食塩:19 %
 蛋白質:18 %
  脂質:28 %
カルシウムが豊富ですが、完全食品とまではいきません。

焼きサンマ 小1尾 70g (Grilled Sanma?)

異常豊富:VB12 (676%),  VD (223%)
特に豊富:ナイアシン
  豊富:蛋白質、脂質、VB6
カロリー:209 kcal
  食塩: 2 %
 蛋白質:23 %
  脂質:26 %
体に良さそうな食品ですが、VB12とVDの含有量がよく分からないレベルになっています。 あまり大量に食べるのはよしましょう。1日に焼きサンマ3匹とかは、危険かもしれません。

ごはん(白米)お茶碗小盛り 130g (Steamed white rice)

  豊富:Cu
カロリー:218 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質: 4 %
  脂質: 1 %
なんというか、ご飯というのは炭水化物の塊です。一応穀類なので、いろんな栄養が1-5%レベルで入ってますが、基本的に貧栄養食品といえます。

スパゲティ (ゆで) 140g (Boiled Spaghetti)

  豊富:Cu
カロリー:209 kcal
  食塩: 6 %
 蛋白質:10 %
  脂質: 2 %
意外と栄養のあるスパゲティ。食物繊維も、10%です。ごはんよりは、スパゲティのほうが、体に良さそうです。

そば(ゆで) 0.8玉 160g (Soba)

  豊富:Cu
カロリー:211 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質:10 %
  脂質: 3 %
体によいと言われていた気がする、そば。予想よりはダメな感じです。 ただ、食物繊維を、15%含有し、スパゲティと同程度には体に良さそうです。

にんじん(皮むき・生) 3本 550g (Carrot ?)

異常豊富:VA (831%), K, VB6, 食物繊維
特に豊富:
  豊富:Ca, Mg, Cu, VE, VK, VB1, VB2, ナイアシン, VC
カロリー:209 kcal
  食塩: 6 %
 蛋白質: 4 %
  脂質: 1 %
そんなに食えるか、という突っ込みはご容赦を。
ん〜、有名なのは知っていましたが、このビタミンAの量は異常ですね。 計算上は、わずか66gで一日分のビタミンAをまかなえます。
蛋白質がないので、完全食品とはなりえませんが、その他の栄養をみると、かなり 完全に近いです。

ほうれん草 (夏採り・ゆで) 1束 200g (Boiled Spinach)

異常豊富:K (218%), Mg, Fe, Zn, Cu, Mn, VA (800%), VE (270%), VK (3657%), VB2, VB6, VC (100%), 食物繊維 (137%)
特に豊富:VB1, ナイアシン
  豊富:蛋白質、P
カロリー:50 kcal
  食塩: 0 %
 蛋白質:28 %
  脂質: 7 %

食べるとポパイになるという有名な薬草(笑)

科学的にも、そのすごさが裏づけられました。我々の分類で「豊富」以上に入らない成分がほとんど無いという・・。欠乏するのは、VDとVB12(と食塩)だけです。
意外なところから、

完全食品候補

が現れました。
ただし、ゆでほうれん草だけで生きていくためには、毎日8kg食べる必要があります(爆)。

とりあえずの結論

現段階では、

とにかく、ほうれん草食っとけ

といえます。アイツは、マルチビタミン剤なみにすごいです(注:言いすぎですw)。

次点は、にんじん・枝豆・みかん

豆腐・卵なども、そこそこ優秀です。 主食は

白米よりは、スパゲティ・そば


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