20年間近く外食生活を続ければ、食品の栄養が気になるのは当然です。本稿では、
如何にして自炊せずに栄養をとるか
に着目し、科学的視点
から外食の栄養バランスを検討します。人間が1日に摂取すべき栄養量は、たとえばここなどにあるように、非常に多様です。しかし、現代の先進国で外食しまくっている人にとって、重要な点は次のようにまとめられると思います。
糖分や脂質の取りすぎはダメでは?
はい。もちろん脂っこいものを山ほど食べて、カロリー摂取過多になると、肥満になります。当然体によくないです。しかしそれは、食べすぎの問題であって、栄養の問題とは少し異なります。どんなに栄養バランスのいい食事でも、食べ過ぎれば肥満です。そもそも、欲望の命ずるままに外食
したとしても、1日の摂取カロリーは、せいぜい2500kcal
くらいになるはずです。これを超えるような場合は、もはや栄養の問題ではなく、ストレスなどによる過食、が疑われます。 成人男性で肉体労働をしていない場合は、摂取目安は1800kcalくらいですから、食べすぎには気をつけなければいけないのですが、 とりあえずここでは、肥満の問題ではなく、栄養の問題だけを考えることにします。毎日に摂取するカロリー量は一定であるべきです。栄養に気をつかうということは
限られた食事量の中で、すべての栄養を摂取する
という最適組み合わせ問題
なのです。甘いものや脂っこいものが体に悪いのは、栄養バランスの観点から言うと、そのような
カロリーばかりやたら高い貧栄養食品
で、一日の摂取カロリーを取ってしまうことによって、必要な栄養が取れないのが問題なのだと思われます。 これには、人間はカロリーが足りると、満腹になる
という人間行動心理も深く関わります。お腹がいっぱいになれば、栄養上は こんにゃく(カロリーがほぼ0で食物繊維が豊富)を追加で摂取すべきであっても、食べようという気にならないわけです。これは裏を返せば、カロリーが足りているというのが、人間の体にとっていかに重要なファクターか ということでもあります。ビタミンやミネラルがなくたって、しばらくは生きてますが、カロリーがゼロでは飢え死に することからも明らか。
食事に含まれるカロリー源は3種類です。脂質は1gで9kcal、糖質とたんぱく質は1gで4kcalです。 そして、1日の摂取カロリーの50%を炭水化物(糖質)、25%をたんぱく質、25%を脂質から取るのがよい とされています。これを、1800kcalの食事で計算すると
炭水化物(糖質)は、1日225g
たんぱく質は、1日112g
脂質は、1日50g
となります。この3大栄養素の含有量は、食品に表示されています。 たとえば、普通サイズのポテトチップス(170g)の場合、100gあたり34gの脂質、すなわち57gの脂質が含まれているわけです。 一袋で、一日の制限を越えてますね〜油っぽいものが特に体によくないのは、ほとんどの食品で、たんぱく質と脂質は同時に摂取してしまう という事情があります。脂質をまったく含まずにたんぱく質だけを含むのは、スポーツ用の乾燥プロテイン剤くらいなものです (まぐろの赤身などは、この点で優秀)。良質のたんぱく質は欠乏しがちなのに、脂質に割り当てられた1日50gを、貧栄養なもの(サラダ油などたんぱく質を含まない)で使ってしまうと、 体に悪いということです。
1日の摂取カロリーの10%をその食品から取った場合、1日の摂取必要量のどれだけが取れるか
によって「食品Aにおける栄養素Bの豊富さ」を定義します。たとえば食品Aの食物繊維の値が10%の場合、食品Aは食物繊維に関して標準的な栄養を持っているといえます。
値が100%の場合は、その食品によって1日のカロリーの10%を取るだけで、1日に必要な食物繊維をすべて摂取できる計算です。
食品によって、重さあたりのカロリー量が大きく異なることに注意してください。参考のため、タイトルに目安となる摂取量を記載しました。
すべての栄養素が10%以上になるように食べることが、理想的と言えます。20%以上となる栄養素を表記します。
食塩、蛋白質、脂質については、絶対量も併記しておきます。
異常豊富:60+ % (特に異常に豊富な栄養素に関しては、その値を記載) 特に豊富:40+ % 豊富:20+ % カロリー: kcal (タイトルにある分量を摂取した場合) 食塩: % 蛋白質: % 脂質: %
特に豊富:Cu 豊富:K, 食物繊維 カロリー:73 kcal 食塩:0 g 蛋白質:1 g 脂質:1 g意外とミネラルが豊富ですし、食物繊維が取れます。食べて損することはないでしょう。食え!
一つ目の例なので解説を。なしはミネラルであるCu(銅)が「特に豊富(40〜60%)」です。なし1個は73kcalです。 つまり、なしを2個半食べれば1日の摂取カロリーの10%をなしから取り、そのときCuの摂取量は1日の目安量の 40〜60% になっています。
異常豊富:VA,VC 特に豊富:VB6 豊富:K, Mg, Cu カロリー:111 kcal 食塩:0 g 蛋白質:2 g 脂質:0 g私の大好きなすいか。ビタミン類が豊富です。すいかは冷蔵庫に入れあっても、すぐ腐るのが問題です。
異常豊富:VA, VC (192%) 特に豊富:K, VB1 豊富:Mg, Cu, VE, VB6,食物繊維 カロリー:221 kcal 食塩:0 g 蛋白質:4 % 脂質:1 %冬に食べまくると、6個くらい食べてしまえるみかん。ビタミンCの宝庫といわれる実力を遺憾なく発揮してくれます。計算上は、みかん3つで1日に必要なビタミンCがすべて摂取できます。
豊富:脂質、Na, Fe, VB1 カロリー:212 kcal 食塩:26 % 蛋白質: 8 % 脂質:24 %見るからにダメ食品です。この脂質の多さに対するたんぱく質のなさが、すべてを物語っています。
豊富:脂質 カロリー:547 kcal 食塩: 9 % 蛋白質:13 % 脂質:21 %皆が「ダメだ、ダメだ」というマクドナルドの商品。マクドナルド発表の栄養成分表によると、発表されているすべての成分(Na,K,Ca,P,Fe,VA,VB1,VB2,ナイアシン,VC,食物繊維)において、7%程度、すなわち「そこそこ栄養豊かである」ことになっています。食物繊維とVCが、ともに4%程度と貧弱ですが、それでも他のダメそうな食品と比べれば、かなり健闘している部類に入ります。
異常豊富:K, VC 特に豊富:Cu, VB6 豊富:Mg, VB1, ナイアシン カロリー:205 kcal 食塩: 0 % 蛋白質: 6 % 脂質: 0 %生、というのが良く分かりませんが、とにかくVCが豊富な食材です。
異常豊富:Mg, Cu, VK, 特に豊富: 豊富:蛋白質、脂質、K,Ca,P,Fe,Zn,Mn,VB1,ナイアシン、VB6 カロリー:202 kcal 食塩: 0 % 蛋白質:24 % 脂質:20 %なんというか、くせの強い食品ですねえ。高栄養なのは間違いないです。
特に豊富:Mg, Cu, 食物繊維 豊富:蛋白質、脂質、K,P,Fe,Zn, VE, VB1, ナイアシン カロリー:202 kcal 食塩: 0 % 蛋白質:26 % 脂質:20 %食物繊維が豊富です。高栄養なのは間違いないです。
特に豊富:VB12 豊富:VA, VD, VB2, ナイアシン カロリー:211 kcal 食塩: 5 % 蛋白質:24 % 脂質:25 %完全食品の有力候補である卵。なんせ、
ひよこを骨も含めてまるごと食べているようなもの
ですからね。当然高栄養です。卵と豆腐のコンビネーションは、かな〜り完全食品に近いと思われます。
ただし、ビタミンCだけは、別途摂取してください。異常豊富:VB12 特に豊富:Ca, P 豊富:脂質、Zn, VA, VB2, ナイアシン カロリー:203 kcal 食塩:19 % 蛋白質:18 % 脂質:28 %カルシウムが豊富ですが、完全食品とまではいきません。
異常豊富:VB12 (676%), VD (223%) 特に豊富:ナイアシン 豊富:蛋白質、脂質、VB6 カロリー:209 kcal 食塩: 2 % 蛋白質:23 % 脂質:26 %体に良さそうな食品ですが、VB12とVDの含有量がよく分からないレベルになっています。 あまり大量に食べるのはよしましょう。1日に焼きサンマ3匹とかは、危険かもしれません。
豊富:Cu カロリー:218 kcal 食塩: 0 % 蛋白質: 4 % 脂質: 1 %なんというか、ご飯というのは炭水化物の塊です。一応穀類なので、いろんな栄養が1-5%レベルで入ってますが、基本的に貧栄養食品といえます。
豊富:Cu カロリー:209 kcal 食塩: 6 % 蛋白質:10 % 脂質: 2 %意外と栄養のあるスパゲティ。食物繊維も、10%です。ごはんよりは、スパゲティのほうが、体に良さそうです。
豊富:Cu カロリー:211 kcal 食塩: 0 % 蛋白質:10 % 脂質: 3 %体によいと言われていた気がする、そば。予想よりはダメな感じです。 ただ、食物繊維を、15%含有し、スパゲティと同程度には体に良さそうです。
異常豊富:VA (831%), K, VB6, 食物繊維 特に豊富: 豊富:Ca, Mg, Cu, VE, VK, VB1, VB2, ナイアシン, VC カロリー:209 kcal 食塩: 6 % 蛋白質: 4 % 脂質: 1 %そんなに食えるか、という突っ込みはご容赦を。
異常豊富:K (218%), Mg, Fe, Zn, Cu, Mn, VA (800%), VE (270%), VK (3657%), VB2, VB6, VC (100%), 食物繊維 (137%) 特に豊富:VB1, ナイアシン 豊富:蛋白質、P カロリー:50 kcal 食塩: 0 % 蛋白質:28 % 脂質: 7 %
食べるとポパイになるという有名な薬草(笑)
科学的にも、そのすごさが裏づけられました。我々の分類で「豊富」以上に入らない成分がほとんど無いという・・。欠乏するのは、VDとVB12(と食塩)だけです。完全食品候補
が現れました。とにかく、ほうれん草食っとけ
といえます。アイツは、マルチビタミン剤なみにすごいです(注:言いすぎですw)。次点は、にんじん・枝豆・みかん
豆腐・卵なども、そこそこ優秀です。 主食は白米よりは、スパゲティ・そば