研究活動
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専門
数理生物学
(進化ゲーム理論、行動生態学、社会学習と個体学習の進化、協力行動の進化、パターン形成、反応拡散方程式など)
研究業績(和文)|
研究業績(英文)
生物進化の2大理論の統一的理解
包括適応度の理論(IFT)とAdaptiveDynamicsの理論(ADT)は、生物進化の2大理論です。IFTは60年代から協力行動の進化の謎などの解明に貢献した一方、ADTは種分化の謎のなどの解明に90年代から貢献しています。現在、IFTは急速に発展しつつあり、いまやADTや他の各論的な研究によって研究されてきた様々な現象に適用可能になりつつあります。本研究は、IFTとADTを統一的に理解し、生物進化の統一理論を目指します(関連英文論文 28, 31, 33, 34)。
本プロジェクトは、JSTさきがけ研究(2009-2012)に採択されました。
協力行動の進化
ダーウィンの進化理論は、個体の適応度を最大化するものが生き残るというものであるのに、自己犠牲的な協力行動はバクテリアから人間にいたるまで幅広い生物にみられています。この協力の進化の謎は、進化生物学の大きなトピックのひとつです。本研究室では、多数のプレイヤーが資源を共有し、大規模協力によって社会全体の利得を向上させるという公共財ゲームの研究を行っています(関連英文論文 2, 7, 14, 17, 19, 21, 23, 24, 27, 31, 33)
人類における学習能力の進化
ヒトを特徴づけるのは何でしょうか? 増大した脳容量が支える圧倒的な学習能力は、ヒトのその他の性質(二足歩行、無毛など)に比べても、ひときわ特徴的です。とくに社会学習(言語などによる親や他個体の行動の模倣)はヒトの文化を維持する上でなくてはならないものです。個体による発見・発明の蓄積が可能になったことで、芸術・科学技術など我々の進歩した文化は生まれました。このような学習能力の起源を、数理モデルを用いて研究しています(関連英文論文 10, 11, 15, 18, 26, 29, 30, 32, 35, 36)
本プロジェクトは、科学研究費補助金新学術領域「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」(2010-2014)の支援を受けています。
パターン形成
自然界には、複雑で美しいパターンがしばしば見られます。特に生物は、さまざまなパターンを作り出し、それ自体が生命の証ともいえます。このようなパターン形成を理解することは、生物学のみならず物理学など多くの自然科学において、重要な研究です。本研究室では、バクテリアコロニーや空間ゲームなどに現れるパターン形成の研究を行っています。(関連英文論文4, 5, 6, 9, 14, 17, 21, 24)。
行動生態学
特定のモデル生物における特定の行動の詳しい研究もまた、非常に重要です。なぜなら、進化理論から導かれる仮説は、実験によって検証される必要があるからです。実証研究者と密に共同することで、アリにおける分業(1)、サンショウウオの共食い(2,8,20)などを研究しています。また、繁殖システムや性比の進化などの研究も行っています(12,13,16)
履歴
生年月日:
1973年(昭和48年)5月6日
学歴:
1992年(平成4年) 3月: 灘高等学校・卒業
1996年(平成8年) 3月: 京都大学 理学部・卒業
1998年(平成10年)3月: 京都大学 大学院理学研究科生物科学専攻・修士課程修了
2001年(平成13年)3月: 京都大学 大学院理学研究科生物科学専攻・博士課程修了
*大学院では京都大学生態学研究センターにて研究に従事
学位:
2001年(平成13年)3月23日: 京都大学理学博士
主指導教官:山村則男教授
博士論文:Adaptation and evolutionary dynamics of social traits of creatures in game-theoretical situations
職歴:
2001年(平成13年) 4月: 東京大学 工学部化学システム工学専攻 技術官
2003年(平成15年) 6月: 東京大学 理学系研究科生物科学専攻 研究拠点形成特任研究員(21世紀COE)
2006年(平成18年) 4月: 日本学術振興会 特別研究員PD (受け入れ機関:同上)
2007年(平成19年) 9月: 明治大学 先端数理科学インスティテュート(研究・知財戦略機構) 特任准教授
2009年(平成21年)10月: 科学技術振興機構 さきがけ研究員(兼任)
2011年(平成23年) 4月: 明治大学大学院 先端数理科学研究科 特任准教授
准教授とは、以前の助教授のことです(学校教育法改正により平成19年度から改名)。特任とは任期付ということを意味します。期限付きの競争的資金を増やし、終身雇用職を減らすという国の政策により、今は特任教員が増えています。
2013年(平成25年) 4月: 明治大学 総合数理学部 准教授
2018年(平成30年) 4月: 明治大学 総合数理学部 教授
所属学会など:
- 日本数理生物学会
- 日本物理学会
- 日本応用数理学会
- 日本生態学会
- 日本人類学会
- 京都大学生態学研究センター協力研究員
賞罰:
- 日本数理生物学会 第一回研究奨励賞 (Japanese-Korean joint meeting for mathematical biology, Sep 16-18, 2006, Kyushu Univ)
- 明治大学創立130周年記念懸賞論文・自然科学分野・最優秀賞 (2011)
競争的研究資金の獲得状況:
e-Rad 研究者番号: 10376551 機関コード: 明治大学 2132682000 部局コード: 総合数理学部 026
役職など:
- 明治大学先端数理科学研究科現象数理学専攻 専攻主任 (2014年4月 - 2017年3月)
- 日本数理生物学会 幹事長 (2013年1月 - 2014年12月)
- 日本数理生物学会 大久保賞選考委員 (2024年1月 - 2026年12月)
資格など:
平成12年国家公務員Ⅰ種試験合格(情報科学)、第一種情報処理技術者、普通運転免許、スキー2級
研究業績(和文)
査読付き国際誌に発表した論文リスト(つまり主な業績)は、 英語ページのPublications をご覧下さい
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「繰り返し囚人のジレンマゲームにおいて進化的に安定な協力を実現する学習戦略」
若野友一郎
東京大学工学部 技術報告 (2001) 137-140
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「2次元反応拡散系の数値解析技術」
若野友一郎
東京大学工学部 技術報告 (2002) 95-100
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「反応拡散系の数値計算と可視化技術」
若野友一郎
東京大学工学部 技術報告 (2003) 113-116
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「バクテリアコロニーパターン形成における等速進行波解の相転移」
LINK
若野友一郎
京都大学数理解析研究所講究録 No.1499 (2006) 101-106
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「同調伝達による協力行動・スパイト行動の時空間ダイナミクス」
LINK
若野友一郎
京都大学数理解析研究所講究録 No.1663 (2009) 124-129
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「バクテリアの自己組織化」
若野友一郎
自己組織化ハンドブック(国武豊喜 監修、NTS出版、2009年)第1編(基礎)第1章(パターン形成)第8節(生命系)2項(Turing構造) p.342-345
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「人間社会と協力・学習の進化」
若野友一郎・中丸麻由子
シリーズ数理生物学要論(重定南奈子・巌佐庸・竹内康博・瀬野裕美[責任編集]、共立出版、2010年) 巻3『「行動・進化」の数理生物学』第8章 pp.155-182
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「分布拡大時における個体学習者と社会学習者の共存」 PDF
若野友一郎
文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)交替劇B01班2010年度研究報告書(2010)
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「包括適応度の理論~分散率の進化を例に~」 PDF
若野友一郎
日本数理生物学会ニュースレター No.65 (2011) 5-10
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「同調伝達による協力行動とスパイト行動の空間ダイナミクス」 PDF
若野友一郎
文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)交替劇B01班2011年度研究報告書(2011)
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「文化進化の数理モデル:その狙いと今後の展望」 PDF
若野友一郎
文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)交替劇B01班2012年度研究報告書(2012)
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「学習と活用のトレードオフ:蓄積的文化進化における最適な学習スケジュール」 PDF
若野友一郎
文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)交替劇B01班2013年度研究報告書(2013)
研究業績(英文)
英語ページのPublications をご覧下さい
学会発表など(2009年以降)
- 若野友一郎 「包括適応度理論の基礎:マルコフ連鎖における定常分布を用いて」 日本数理生物学会(口頭発表)。東京大学 2009年9月
- J.Y.Wakano, "Self-organized pattern formation in bacteria colony pattern formation", Multiscale Analysis of Self-Organization in Biology (Poster), Banff, Canada, 2009年7月
- J.Y.Wakano,“Does inclusive fitness always predict the direction of evolution? : a mathematical answer", 日本数理生物学会(口頭発表)。北海道大学2010年9月
- J.Y.Wakano, "Spatial Pattern Dynamics of Ecological Public Goods", (Invited Talk), Budapest,Hungary, 2010年10月
- 若野友一郎 「学習能力の進化」 日本人類学会(口頭発表)。伊達2010年10月
- J.Y.Wakano, "Reduction from reaction-diffusion model to two-patch compartment model", European Conference on Mathematical and Theoretical Biology (Oral), Krakow, Poland, 2011 June
- J.Y.Wakano, "Competition for empty space between individual and social learners", International Workshop of Theoretical Study on Evolution of Learning (Oral), Tokyo 2011 Nov
- J.Y.Wakano, "Scheduling of individual and social learning as an optimal life history strategy" (Oral), RNMH2012, Tokyo 2012 Nov
- J.Y.Wakano and Y.Iwasa, "Evolutionary branching in a finite population: deterministic branching vs. stochastic branching", 日本数理生物学会(口頭発表)。岡山大学2012年9月
- 若野友一郎 「生物進化の2大理論の統一的理解」 JSTさきがけ「生命現象の革新モデルと展開」研究成果公開報告会(口頭発表)。東京大学2013年2月
- J.Y.Wakano and Y.Iwasa, "Evolutionary branching in a finite population: deterministic branching vs. stochastic branching" (Invited talk), ReaDiLab meeting, Carry-le-Rouet, France, 2013 June
- J.Y.Wakano, "Adaptive dynamics and its application to structured populations", Workshop "Inclusive fitness and game theory" (Invited talk), Arolla, Swizterland, 2013 June
- J.Y.Wakano, "The Pareto-optimal versus evolutionarily stable learning schedule in cumulative cultural evolution", 日本数理生物学会(口頭発表)。静岡大学2013年9月
- J.Y.Wakano, "Evolutionary branching in structured populations" (Invited talk), ReaDiLab meeting, CIRM Luminiy, France, 2014 June
- J.Y.Wakano, "Evolutionary branching in structured populations", 日米合同数理生物学国際大会(口頭発表), 大阪, 2014年7月
- J.Y.Wakano, "Learning schedule and cultural evolution: COS and ESS", RMNH 2014: The second international conference on replacement of Neanderthals by modern humans: Testing evolutionary models of learning. Dec. 2-4, 2014, The Cultural Center, Date, Hokkaido, Japan.
- 若野友一郎 「生物進化のダイナミクスとその数理解析」 日本数学会・応用数学分科会・特別講演(招待講演), 東京, 2015年3月
- 若野友一郎 「集団サイズと進化ダイナミクスの関係」 沖縄人類学ワークショップ(口頭発表), 那覇, 2015年7月
- J.Y.Wakano, "When does competition among individuals promote cumulative cultural evolution?" (Oral), JSMB-CJK2015, Kyoto, 2015 August
- 若野友一郎 「空間構造のあるモデルにおける進化的分岐」 第12回生物数学の理論とその応用(遷移過程に現れるパターンの解明に向けて) 特別講演(招待講演)。京都, 2015年11月
- J.Y.Wakano, "The effect of stochasticity in adaptive dynamics", Stochastic and Deterministic Models for Evolutionary Biology, BIRS-CMO workshop, Oaxaca, Mexico, 2016 Aug
- J.Y.Wakano, "Traveling waves of cultural invasion" 日本数理生物学会(口頭発表)。九州大学, 2016年9月
- J.Y.Wakano, "Traveling waves of cultural and population dynamics" (Invited talk), Reaction-Diffusion Systems in Mathematics and Biomedicine (GDRI), Frejus, France, 2016 September
- J.Y.Wakano, "The effect of stochasticity in adaptive dynamics" (Invited talk), International conference for Korean Mathematical Society 70th Anniversary, Seoul National Univ, Korea, 2016 Oct
- J.Y.Wakano, "Derivation of replicator-mutator equation as a limit of individual-based models" 日本数理生物学会(口頭発表)。北海道大学, 2017年10月
氏名について
私の本名は若野友一郎ですが、英語での文献はすべて
Joe Yuichiro Wakano
の名で発表しています。Wakanoというのはかなり珍しい姓なんですが、研究者として活躍しておられるWakanoさんはたくさんおられます
(2006/06/12現在、WebOfScienceでAUTHOR=WAKANOを検索すると、115件もヒットします。日常生活での若野姓の稀さを考えると、すごいことです)。
そこで、ネット上のハンドルでもあるJoeを冠しているわけです(バイリンガルでも帰国子女でもありません)。
駄文
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ポントリャーギンの最大原理における必要十分条件について
内容は適当です(爆;
数式はすべてOpenOffice1.1.3のWriterで書いて、そのままHTMLにエクスポートしただけ。
OpenOffice万歳!(MS Wordでも出来るのかも(汗;)
2005.1.28追記:
適当というか、真面目に書いてるのですが、明快な結論を出せなかったということです。
どなたかこの問題について教えてくださるor一緒に議論してみたい方がいれば、ぜひ連絡ください。
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バナッハ=タルスキーの定理について
あの、適当な分割によって球の体積をいくらでも増やせる、という有名かつ非常識的な定理についての
個人的見解です(解説です、と書きたかったが、そこまでちゃんと理解してないので、断念(涙))。
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